本年はドイツの詩人メーリケの没後１４０年にあたり、リートの傑作を生んだヴォルフをテーマとした特別演奏会に出演させて頂きます。劇性のあるオペラの華やかで壮大なマクロの世界を、独自の語法でリートというミクロの世界に凝縮させる事に成功したヴォルフの音楽は、まさに聴き手を一瞬にして魅了させるもので、その特長的な和声とテクストにおける描写の表現は圧巻です。歌とは別にピアノのパートにも異なる旋律を配置する等、単に歌い手とピアニストの共同作業という枠を完全に超えさせ、１＋１＝∞という音を紡ぎながらコラボレーションを行う上での計り知れないスケールの音楽が演奏者にも求められている大変難しい作品となっています。シューマンのリートを敬愛した故の、ピアノに置かれる音楽の重要な役割は、モデルとしたこの「詩人」の独創性をはるかに超越しており、よりインテンシティを持った芸術性の高い作品として存在しています。この度は「炎の騎士」等を、関西で活躍されているバリトン歌手の小玉晃さんと共演させて頂きますが、豊かな美声と素晴らしい表現力で、語られる様な
“Sprechgesang”を舞台で実現して下さる事と期待しております。