コラム

チョコレートの甘い思い出

本日はバレンタインデーですが、昨今では恋人同士だけに限られたイヴェントとしてではなく、様々な思いを伝えられる日として、日本では大切な行事となりつつあります。

チョコレートと言えば、ベルギーやフランスの物がとりわけ有名で、ブランドや種類も数え切れない程豊富ですが、ヨーロッパの人々は夫々自分達の‘お気に入り’があって、いつもそれらを調達している様です。
彼らは、バレンタインデーに限らず、オケージョナルな日には、よくチョコレートを贈ります。

パリに住んで一年目の頃、お世話になっていた大家のマダムは、クリスマスや、また試験勉強の為に、と励まして頂く度に、チョコレートをプレゼントして下さいました。
そして、また彼女は、私の拙いフランス語を優しくも厳しく直して下さる、良き会話の相手であり、ちょっとした指導者でもありました。

私もお返しに、心ばかりのスイーツを差し上げると、にこにこされながら喜ばれて「私は自分ではグルメだと思っているのだけれど、実は単なるグルマンなのかしら!」
と仰って、さりげなく言葉遊びを教えて下さいました。
‘グルメ’とは、フランス語で‘美食家’という意味ですが、大変似た言葉の‘グルマン’は、‘食いしん坊’という意味になってしまうのです。
ちょっとした文字の違いで、食に対する感覚の洗練の度合いが変わるのですね。

とりわけフランス人は、プレゼントを贈る事は、彼らの研ぎすまされたセンスや才能のひとつを贈る事位に、いつも真剣に考えて取り組んでいます。
そして、毎回そこには温かい気持ちが込められていて、頂く方も心から幸福になります。
私は、常々贈り物をするという行為は、品物を差し上げる以上に、どの様な思いを込めお贈りするのか、また反対に頂く側は、その気持ちをいかにして受け取るかという事が、最も重要なのではないかと感じております。

チョコレートを贈り合う事については、世代別には賛否両論ある様ですが、個人的には、日頃の思いを伝えられる素敵な日として、また言葉で感謝を伝える事がなかなか苦手な国民性の日本人にとっては、有難く貴重な日として、このバレンタインデーは存在するのではないかと思っております。

さて、皆様は今年は幾つの‘思い’を、大切な方々にお贈りされますか?

2012.02.14 13:20

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