コラム

「甘い」誘惑に負けず

最近では「糖質制限」という言葉が大変ポピュラーになり、デパ地下やスーパー等に足を運びますと、糖質制限のためのスイーツやパン、麺類等をよく見掛ける様になりました。
新商品が発売される度に、興味津々でトライしては楽しんでおりますが、パッケージの表示を目にしない限り、どれも糖質を控えてある事には気付かないほど、本当に美味しい物ばかりです。
先日は、初めてお豆腐で作られたというおそうめんを頂きました。糖質だけでなく、カロリーも大変低く、体に良い事この上ありません。
やはり頂く前は、単に細かい千切りのお豆腐を食べるだけ、になるのでは? と予想しましたが、これが見事に裏切られ、本物のおそうめんとほぼ変わらない満足感が得られました。

健康的な地中海食を実践する上で、糖質をゼロにする必要は全くありませんが、オーバーウエイトを防ぐためにも、過剰摂取は避ける事が理想であり、糖質を含むお料理は、作る段階からなるべく少量を目指して、日々の食生活を送りたいと考えます。
読者の中には、ダイエットが目的であるとか、また血糖値やHbA1c(ヘモグロビンA1c)*の上昇を抑えるために、糖質制限を取り入れていらっしゃる方々も多いのではないかと存じます。

*ヘモグロビンは赤血球内のタンパク質のひとつで、全身の細胞に酸素を運ぶ働きをしており、血液中のブドウ糖がヘモグロビンと結合すると糖化ヘモグロビンになります。血糖値が高いほどヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなり、一旦糖化したヘモグロビンは赤血球の寿命である120日が過ぎるまで元に戻りません。HbA1cは糖化ヘモグロビンがどの程度の割合で存在しているかをパーセントで表したものです。

皆様もご存じの「順番ダイエット(減量ではなく、食事療法を意味します)」は、毎食をまず野菜やタンパク質で始めてから、それらを食べきり、最後にご飯やパンを頂くというものです。いわば日本の懐石料理の様なスタイルのこの食事療法は、血糖値の急激な上昇を防ぐ事ができ、大切な血管を傷つける事がありません。
大変シンプルな方法ですが、臨床試験から得られたエビデンスがありますので、私自身も実践しています。

また、同じ炭水化物や、果物、或いは糖質を含む野菜でも、それぞれ摂取後の血糖値が異なる事を考慮しますと、GI(グリセミック・インデックス)値**を意識した食べ方も効果的である様です。

**GI値とは、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取してから2時間までの血液中の糖濃度を計測したものです。グルコースを基準値の100とした場合、おおむね70以上が高GI、56~69が中GI、55以下が低GIとなります。食後血糖値の上昇度を示す指標です。

例えば、最近では人気の高いふわふわの柔らかくて真っ白な高級食パンや、Paulの美味しいフランスパンよりも、全粒子のパスタや日本のおそばの方が、同じ炭水化物でも低I値だそうですから、そう言った物を好んでチョイスする事で、血糖値をより低く抑えられるという事になります。

以下は、2型糖尿病を発症された日本人の方を対象に行われた研究ですが、HbA1c値を下げるためには、加糖ジュース等のソフトドリンクやスイーツ、パン、ラーメンを減らした方が、白いご飯を減らすよりも、最大で4倍ほどの効果が得られたという興味深い論文です。

Diabetes Metab. J
Haimoto H. et al,
Reducing Carbohydrate from Individual Sources Has Differential Effects on Glycosylated Hemoglobin in Type 2 Diabetes Mellitus Patients in Moderate Low-Carbohydrate Diets
PMID:32794380

同じ糖質を含む食品でも、何を減らすかで、HbA1cへの反映のされ方も異なるという事が示されました。

これからも、得られている様々な知見について学び、それを最大限に活用する事で、より楽しみながら糖質制限を実践する事ができそうですね。
あとは「甘い」誘惑に負けず、この制限をいつまで維持してゆけるかという、本人の意思の強さの問題になりますが…。
何事も継続は力なり、です。

2021.08.16 23:05

新着コラム

2024.05.31
「コルトーを偲ぶ会2024~アルフレッド・コルトー没後62年~」
2024.04.28
多様性の時代に相応しい日本食
2024.03.30
謎解きの魅力とは
2024.02.29
「第13回川棚・コルトー音楽祭」開催のお知らせ
2024.01.05
謹賀新年

バックナンバー