コラム

完全5度の目覚まし時計

我が家には、​祖母から譲り受けた形見の品がありますが、いずれも味のある昭和のレトロな物ばかりで、大切に使っています。
その中でも、針が振れるタイプの体重計は、長らく愛用していましたが、どうやら目方が実際よりも2kgほど少なく表示される様になっていた事が判明し、(そのまま使い続けて、痩せた気分に浸っていたい気もしましたが…)、泣く泣く手放しました。
現在は、体脂肪やら何やら、色々と測定でき、記録もされるデジタル体重計が、それに取って代わりましたが、やはりシンプルに針で体重のみを測定するヘルスメーターの方が、アナログ人間の様な自身には合っている気がしています。

さて、読者の皆様は、毎朝起きる際に、ご家族の方を頼られたり、またスマホのアラームをセットする等はされているでしょうか?
私もアラームのお世話になっているひとりですが、しかしそれは、通常のアラームとは少し異なっています。
「〇時にセットしたから、その時間になる前に必ず起きて、目覚まし時計が鳴らない様にする」、という意味のアラーム=警告なのです。

何だそれは? と怪訝に思われたかもしれませんが、つまり、目覚まし時計を前もってセットしておくと、それが鳴らない様にしなければ! という気持ちによって目を覚ます事ができる、という何とも矛盾した方法となっています。
そうなってしまった理由は、この時計のアラーム音にあります。

その音とは、固定ドで言えば、ソとレの完全5度(=音の隔たりのひとつで、半音を必ずひとつ含む)になっており、セットした時刻が訪れると…

「ソソソソ、(休符)、レレレレ、(休符)、ソソソソ、(休符)、レレレレ、(休符)、ソソソソ、レレレレ、ソソソソ、レレレレ、レレレレレレレレレレレー!!!」

ボタンを押してアラームを止めない限り、この様に永遠に甲高いレの音がフォルティシモで響き渡ります。

耳にすると非常に心地が悪いものですが、しかし聴覚に訴えるその音の心地悪さが、この目覚まし時計の最も優れた点と言う事ができます。何故なら、この様にストリンジェンドで迫ってくる音を聞いて、起きられない人はおそらく皆無だろうと想像できるからです。

この時計も、体重計と同様に祖母が購入した物ですが、なかなかに「粋な」目覚まし時計を残してくれたなあ、と、ああだこうだ言いつつ使わせてもらい、早朝に起きて出掛けなければならない日には、大変重宝しています。

目覚ましが鳴る前に起きられるなら、そもそもセットする必要がないのでは? と不思議に思われるでしょうが、やはりセットしておかなければ、その時間に自然と目が覚める事はない様です…。
その点においては、目覚ましとしての機能を十二分に果たしている、素晴らしい時計なのです。

2021.10.24 23:45

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