音楽は精神の炎を噴出させねばならぬ
さて、また本年も川棚・コルトー音楽祭のシーズンが近づいてまいりました。
開催の日を心待ちにしていて下さる音楽愛好家の方々も年々増え、大変嬉しく有難い事と厚く感謝申し上げます。
20世紀を代表するフランスの世界的ピアニスト、アルフレッド・コルトーと川棚の町には、一体どの様な深いエピソードが残されていたのでしょうか。
まだご存じないという方には・・・ 少しだけご紹介させて頂きたいと思います。
時は1952年(昭和27年)のお話、コルトーはファン待望の初来日を果たし、全国ツアーの一環で山口県(下関・宇部)を訪れました。その独特のテンポ・ルバートに象徴される、自由でありながらエレガンスを保ち、洗練された香り高き演奏は、満場の聴衆を惹きつけ圧倒しました。
その折に滞在した、川棚温泉のホテルから見える景色に魅了され、「こんなに美しい夢の様な景色は見た事がない。なぜか外国にいる気がしない。日本はブレ・ペイ(邦訳で“まさに本当の国”)だ」、と言い残しました。
響灘に浮かぶ厚島に魅せられたコルトーは、当時の川棚村長に、「天国の様なあの島でこっそり死にたい。ぜひ島を買い取りたい・・・」と交渉。村長は大変驚きましたが、その熱心さに心打たれ、「あの島に永久にお住みになるなら無償で差し上げましょう」、と快諾しました。
「私の思いは、ひとりあの島に残るだろう」、と呟いたそうです。
また、島の名前を“孤留島(コルトー)”と命名する事も提案されました。
川棚村長は、早速コルトーに碑文の揮毫を依頼しました。
コルトーは、「この上なく美しいこの島に、友情によって書かれたこの碑文が、願わくは絶えず夢の中に住む精神を持った一フランス人音楽家の思いをいつまでもとどめておく事ができます様に」と記し、自らの信条として、「音楽は精神の炎を噴出せねばならぬ」という、コルトー自身が魂を注ぎ、ピアノ・ソナタ全曲を始めとする多くの作品の演奏に取り組んだ、そのベートーヴェンの言葉を引用して、日本の音楽学徒に残しました。
惜しくも、コルトーは再来日を果たせぬまま、10年後の1962年にこの世を去りました。
それから、時はしばし流れ、21世紀となった2003年になり、コルトーがパリに設立した名門のエコール・ノルマル音楽院から、川棚のホテルへ一本の電話が入りました。
そして、この事がきっかけとなり、生前コルトーが周囲に話していた、「カワタナの夢の島」と川棚の厚島が結び付き、当時の物語が再び甦ったのです!
日仏交流150周年にあたる2008年11月に、エコール・ノルマル音楽院と下関市との、記念すべきパートナーシップが締結されました。
世界的に活躍する日本の建築家・隈研吾氏の設計による「川棚の杜」が2010年にオープンし、その中にこの伝説のピアニストの名を冠にした“コルトーホール”が誕生しました。
毎年、フランスから著名なアーティストを招き、「川棚・コルトー音楽祭」が開催されています。
さて、本年の川棚・コルトー音楽祭プログラムは、室内楽の醍醐味を心行くまで味わえる、ストリング・トリオを始め、ピアノ・カルテット等々、いささか玄人の方々に好まれそうなものではありますが、一流の奏者による、(コルトーの言葉を借りるとするならば)“ブレ・ソン”(邦訳で“まさに本当の音”)を肌で感じて頂ける様な貴重な一夜となりそうです。
折しも、東日本大震災の影響で来日が叶わなかったフィリップ・ミュレール氏が、いよいよ川棚にお越し下さる事が再実現し、私自身も間近で演奏を拝聴できるその日を、今から大変心待ちにしております!
個人的には最も好きなフランスのチェリストのひとりですが、その研ぎ澄まされた感性による美音と、深い解釈には、いつも心を揺さぶられます。
昨年、室内楽の合わせの為に訪れた京都で、ちょうど同じ会場にミュレール氏が居られ、バッハの無伴奏組曲をさらっていらしたので、私はそれをこっそりと(!)お聴きするチャンスを与えられました。
それは、ミュレール氏が独り音楽と対峙する、まさに真の芸術家の音というものを拝聴した瞬間であり、私にとって至福の時となりました。
そのミュレール氏と並び、この度が二度目の川棚公演となる、ヴィオラ奏者のブルーノ・パスキエ氏の、卓越した技術の演奏もまた必聴です。
そして、こちらも超一流の日本のヴァイオリニストである原田幸一郎氏をお迎えして、当夜はどの様なアンサンブルが織り成されるのでしょうか・・・!
多くの皆様に、コルトーホールにお運び頂いて、世界的に活躍する芸術家が、今紡ぎ出す“まさに本当の音”というものを、是非とも体感され、お楽しみ下さる事を願っております。
川棚で、在りし日のコルトーの、良き時代のノスタルジーを感じながら・・・
音楽を通して、心温まる稀有のひとときを、皆様でお分かち合い頂けたら大変幸いに存じます。
第5回 川棚・コルトー音楽祭
開催日時: 2014年4月2日(水) 午後7時開演 (午後6時30分開場)
会場: 川棚の杜<コルトーホール>
プログラム: シューベルト 「弦楽三重奏曲 第1番 変ロ長調 D.471」
ベートーヴェン 「ピアノ三重奏曲 第5番 ニ長調 “幽霊” op.70-1」
ブラームス 「ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 op.25」
ヴァイオリン: 原田幸一郎
ヴィオラ: ブルーノ・パスキエ
チェロ: フィリップ・ミュレール
ピアノ: 古賀千恵
チケット: 全席自由 一般 4000円 高校生以下 2000円
(当日は500円増し)
お問い合わせ: 川棚の杜<コルトーホール>
Tel: 083-774-3855
http://www.kawatananomori.com
※尚、ご旅行に便利な宿泊プラン(川棚グランドホテル・温泉の露天風呂や山口の名物“ふぐ料理”をご堪能頂けます)、も多数お取り扱いしておりますので、遠方の方はどうぞ上記までお尋ね下さいませ。
開催の日を心待ちにしていて下さる音楽愛好家の方々も年々増え、大変嬉しく有難い事と厚く感謝申し上げます。
20世紀を代表するフランスの世界的ピアニスト、アルフレッド・コルトーと川棚の町には、一体どの様な深いエピソードが残されていたのでしょうか。
まだご存じないという方には・・・ 少しだけご紹介させて頂きたいと思います。
時は1952年(昭和27年)のお話、コルトーはファン待望の初来日を果たし、全国ツアーの一環で山口県(下関・宇部)を訪れました。その独特のテンポ・ルバートに象徴される、自由でありながらエレガンスを保ち、洗練された香り高き演奏は、満場の聴衆を惹きつけ圧倒しました。
その折に滞在した、川棚温泉のホテルから見える景色に魅了され、「こんなに美しい夢の様な景色は見た事がない。なぜか外国にいる気がしない。日本はブレ・ペイ(邦訳で“まさに本当の国”)だ」、と言い残しました。
響灘に浮かぶ厚島に魅せられたコルトーは、当時の川棚村長に、「天国の様なあの島でこっそり死にたい。ぜひ島を買い取りたい・・・」と交渉。村長は大変驚きましたが、その熱心さに心打たれ、「あの島に永久にお住みになるなら無償で差し上げましょう」、と快諾しました。
「私の思いは、ひとりあの島に残るだろう」、と呟いたそうです。
また、島の名前を“孤留島(コルトー)”と命名する事も提案されました。
川棚村長は、早速コルトーに碑文の揮毫を依頼しました。
コルトーは、「この上なく美しいこの島に、友情によって書かれたこの碑文が、願わくは絶えず夢の中に住む精神を持った一フランス人音楽家の思いをいつまでもとどめておく事ができます様に」と記し、自らの信条として、「音楽は精神の炎を噴出せねばならぬ」という、コルトー自身が魂を注ぎ、ピアノ・ソナタ全曲を始めとする多くの作品の演奏に取り組んだ、そのベートーヴェンの言葉を引用して、日本の音楽学徒に残しました。
惜しくも、コルトーは再来日を果たせぬまま、10年後の1962年にこの世を去りました。
それから、時はしばし流れ、21世紀となった2003年になり、コルトーがパリに設立した名門のエコール・ノルマル音楽院から、川棚のホテルへ一本の電話が入りました。
そして、この事がきっかけとなり、生前コルトーが周囲に話していた、「カワタナの夢の島」と川棚の厚島が結び付き、当時の物語が再び甦ったのです!
日仏交流150周年にあたる2008年11月に、エコール・ノルマル音楽院と下関市との、記念すべきパートナーシップが締結されました。
世界的に活躍する日本の建築家・隈研吾氏の設計による「川棚の杜」が2010年にオープンし、その中にこの伝説のピアニストの名を冠にした“コルトーホール”が誕生しました。
毎年、フランスから著名なアーティストを招き、「川棚・コルトー音楽祭」が開催されています。
さて、本年の川棚・コルトー音楽祭プログラムは、室内楽の醍醐味を心行くまで味わえる、ストリング・トリオを始め、ピアノ・カルテット等々、いささか玄人の方々に好まれそうなものではありますが、一流の奏者による、(コルトーの言葉を借りるとするならば)“ブレ・ソン”(邦訳で“まさに本当の音”)を肌で感じて頂ける様な貴重な一夜となりそうです。
折しも、東日本大震災の影響で来日が叶わなかったフィリップ・ミュレール氏が、いよいよ川棚にお越し下さる事が再実現し、私自身も間近で演奏を拝聴できるその日を、今から大変心待ちにしております!
個人的には最も好きなフランスのチェリストのひとりですが、その研ぎ澄まされた感性による美音と、深い解釈には、いつも心を揺さぶられます。
昨年、室内楽の合わせの為に訪れた京都で、ちょうど同じ会場にミュレール氏が居られ、バッハの無伴奏組曲をさらっていらしたので、私はそれをこっそりと(!)お聴きするチャンスを与えられました。
それは、ミュレール氏が独り音楽と対峙する、まさに真の芸術家の音というものを拝聴した瞬間であり、私にとって至福の時となりました。
そのミュレール氏と並び、この度が二度目の川棚公演となる、ヴィオラ奏者のブルーノ・パスキエ氏の、卓越した技術の演奏もまた必聴です。
そして、こちらも超一流の日本のヴァイオリニストである原田幸一郎氏をお迎えして、当夜はどの様なアンサンブルが織り成されるのでしょうか・・・!
多くの皆様に、コルトーホールにお運び頂いて、世界的に活躍する芸術家が、今紡ぎ出す“まさに本当の音”というものを、是非とも体感され、お楽しみ下さる事を願っております。
川棚で、在りし日のコルトーの、良き時代のノスタルジーを感じながら・・・
音楽を通して、心温まる稀有のひとときを、皆様でお分かち合い頂けたら大変幸いに存じます。
第5回 川棚・コルトー音楽祭
開催日時: 2014年4月2日(水) 午後7時開演 (午後6時30分開場)
会場: 川棚の杜<コルトーホール>
プログラム: シューベルト 「弦楽三重奏曲 第1番 変ロ長調 D.471」
ベートーヴェン 「ピアノ三重奏曲 第5番 ニ長調 “幽霊” op.70-1」
ブラームス 「ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 op.25」
ヴァイオリン: 原田幸一郎
ヴィオラ: ブルーノ・パスキエ
チェロ: フィリップ・ミュレール
ピアノ: 古賀千恵
チケット: 全席自由 一般 4000円 高校生以下 2000円
(当日は500円増し)
お問い合わせ: 川棚の杜<コルトーホール>
Tel: 083-774-3855
http://www.kawatananomori.com
※尚、ご旅行に便利な宿泊プラン(川棚グランドホテル・温泉の露天風呂や山口の名物“ふぐ料理”をご堪能頂けます)、も多数お取り扱いしておりますので、遠方の方はどうぞ上記までお尋ね下さいませ。
2014.02.27 23:55
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