コラム

アルフレッド・コルトー追悼セレモニーin孤留島

来る6月15日は、フランスを代表する伝説のピアニスト、アルフレッド・コルトーの命日にあたります。
「終の住処」として、かつて移住を切望したものの、その願いは叶う事無く、天国へ旅立ったコルトーへのオマージュを込めて、彼が心から愛した島の孤留島(こるとう)にて、追悼セレモニーが開催されます。

竹田大地牧師による祈りを始め、讃美歌等の合唱が行われますが、私自身も大変恐縮ながら、来日公演の下関でのリサイタルの折にもプログラムとして弾かれ、コルトーの最も得意としていたショパンの作品から、「葬送行進曲」を演奏させて頂く事になりました。

「葬送行進曲」のあの冒頭の厳かなメロディは、万人が知り、恐らくショパンの中では最も著名な作品であるにも関わらず、意外と作曲されたのがショパンであるという事実に、驚かれる方もいらっしゃるかと思います。
「ソナタ第2番‘葬送’」の第3楽章として存在するというよりは、むしろひとつの独立したキャラクターピースの様でもあります。
芥川賞作家で、音楽にも大変精通しておられる平野啓一郎氏による、壮大な長編作「葬送」も、このショパンの名曲のタイトルから引用されたものです。

私自身にとって、この「葬送ソナタ」には大変思い入れがあり、これ迄、幾度と無くコンサートで演奏させて頂きましたが、一番思い出として残っているのは、高校生時代に初めてパリを訪れ、エコール・ノルマル音楽院に隣接する「コルトーホール」で行われた小さな演奏会で、拙い演奏を披露し、温かく聴衆の方に受け入れて頂いた時の事です。
また、エコール・ノルマル音楽院では、コルトーが実際に使用していた部屋でレッスンをして頂いたりもしたのですが、その部屋で「葬送ソナタ」を弾くと、何となく天の方から、コルトーの声で「ショパンはその様に弾くべきではない・・・!」と聞こえてくるのです。
叱咤激励されている様な感じがして、いつも何かしら不思議な物音や気配を感じておりました。
その部屋で弾いていると、いつもコルトーに見守られている様な、何とも言い難い温かい気持ちになるのです。

今となっては、レコードやCD等の録音を通してしか触れる事が叶いませんが、一度で良いからコルトーのあの独特の「色香の漂う音」というものを、実際に聴いてみたかった・・・ と感じます。
レクイエムの意味を込め、「葬送行進曲」の中間部の美しい天国的な歌を、語り掛けられる様に演奏したいと願い、尊敬して止まない天才ピアニスト、コルトーの為に、当日は心から演奏を捧げる事が出来たらと存じます。


2012.06.08 23:50

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