良い心と身体から生まれる演奏とは?
先日、楽器演奏に携わっている人でしたら、誰しもが大変興味をそそられるテーマを持つ研究会へ参加をさせて頂く機会がありました。
「日本音楽家医学研究会」(主宰:東京女子医科大学附属青山病院・整形外科 酒井直隆先生)というタイトルで、音楽家に生じる体の障害や健康問題について、医師、運動学研究家、また演奏家に渡る幅広い分野からスペシャリストが招かれ、レクチャーとディスカッションがなされるものです。
毎年開催されており、本年で第3回目を迎えるそうですが、主に医学的な観点から、様々な問題に取り組んでこられています。東京大学の駒場キャンパスで開催されました。
例え手に故障を抱えていても、治療後の日常生活の動作に支障がなければ、病院では個人的な要望に沿ったリハビリの希望が叶わなかったり、また我々が演奏を行う上での問題が、音楽の専門外の医師にとっては、想像上の理解の届く範囲から逸脱しているという現実があり、この様な研究会は、とりわけ手の悩みを持つ演奏家には、大変有益な知識と情報を提供下さるものだと感じました。
この度は、4つのトピックで、専門分野の各講師により、レクチャーが行われました。
1.音楽家の上肢の問題 (防衛医科大学校・整形外科 尼子雅敏先生)
2.音楽家に多い聴覚の問題 (虎の門病院・耳鼻咽喉科 熊川孝三先生)
3.音楽家の演奏不安について (昭和音楽大学・音楽学部 三谷温先生)
4.音楽家からの要望 (大阪大学大学院・生命機能研究科 吉江路子先生)
いずれのレクチャーも、大変興味深く拝聴しましたが、とりわけ「演奏不安」についてのものが、印象に残りました。
リサーチの現場が、(擬似)コンクールに設定され、会場へは審査員と聴衆が待機している中、各コンテスタント(被験者)は前もって科学的な装置を体に取り付けた上で、リハーサルや本番にのぞみ、実際の演奏時の血圧や心拍数、また筋肉の動きの詳細等を、(主に心理状態に焦点を充てて)調べられるという実験です。
課題曲のショパンのエチュードの或る1曲については、ほぼ一拍毎に(!)データが出されており、審査をされるという状況下においては、コンテスタントの血圧(上)が平均で200強という事が明らかになる等、本番の多大なる恐怖(!)がもたらす人間の体の反応について知り、非常に面白くレクチャーを伺いました。
こうした、本番に伴う緊張からくるストレスや不安は、演奏家は一生付き合ってゆくべく、決して消え去らないものですから、アメリカでは、心臓疾患の治療に関わる或る薬を飲んで、過緊張の不安を少しでも解消しようとするアーティストが多いのだそうです。
但し、この薬を服用して演奏をすると、大変抑揚のないつまらないものになってしまうとの事で、やはり交感神経が極めて優位に立ち、アドレナリンが放出している状態でなければ、人を感動させられる芸術は生み出せないという事なのでしょうか。
天才的なアーティストは、往々にして、アグレッシヴでテンションの高い方が多い様です。
演奏家の体の問題は、個々により技術のレヴェルや、筋力、また指や腕の長さ太さ等、体格から生じる演奏時の障害も全く異なる為、最大公約数を見つけて治療に役立てる事は、仲々容易ではないのかも知れませんが、マニュアルがない以上、多くの悩みを個人が抱え、日々さらう折に対処してゆかなくてはならない現実がある中で、こうした研究がなされる事により、貴重なデータから、問題解決に向けて多くの光がもたらされるものと、今後も大いに期待をさせて頂いております。
「日本音楽家医学研究会」(主宰:東京女子医科大学附属青山病院・整形外科 酒井直隆先生)というタイトルで、音楽家に生じる体の障害や健康問題について、医師、運動学研究家、また演奏家に渡る幅広い分野からスペシャリストが招かれ、レクチャーとディスカッションがなされるものです。
毎年開催されており、本年で第3回目を迎えるそうですが、主に医学的な観点から、様々な問題に取り組んでこられています。東京大学の駒場キャンパスで開催されました。
例え手に故障を抱えていても、治療後の日常生活の動作に支障がなければ、病院では個人的な要望に沿ったリハビリの希望が叶わなかったり、また我々が演奏を行う上での問題が、音楽の専門外の医師にとっては、想像上の理解の届く範囲から逸脱しているという現実があり、この様な研究会は、とりわけ手の悩みを持つ演奏家には、大変有益な知識と情報を提供下さるものだと感じました。
この度は、4つのトピックで、専門分野の各講師により、レクチャーが行われました。
1.音楽家の上肢の問題 (防衛医科大学校・整形外科 尼子雅敏先生)
2.音楽家に多い聴覚の問題 (虎の門病院・耳鼻咽喉科 熊川孝三先生)
3.音楽家の演奏不安について (昭和音楽大学・音楽学部 三谷温先生)
4.音楽家からの要望 (大阪大学大学院・生命機能研究科 吉江路子先生)
いずれのレクチャーも、大変興味深く拝聴しましたが、とりわけ「演奏不安」についてのものが、印象に残りました。
リサーチの現場が、(擬似)コンクールに設定され、会場へは審査員と聴衆が待機している中、各コンテスタント(被験者)は前もって科学的な装置を体に取り付けた上で、リハーサルや本番にのぞみ、実際の演奏時の血圧や心拍数、また筋肉の動きの詳細等を、(主に心理状態に焦点を充てて)調べられるという実験です。
課題曲のショパンのエチュードの或る1曲については、ほぼ一拍毎に(!)データが出されており、審査をされるという状況下においては、コンテスタントの血圧(上)が平均で200強という事が明らかになる等、本番の多大なる恐怖(!)がもたらす人間の体の反応について知り、非常に面白くレクチャーを伺いました。
こうした、本番に伴う緊張からくるストレスや不安は、演奏家は一生付き合ってゆくべく、決して消え去らないものですから、アメリカでは、心臓疾患の治療に関わる或る薬を飲んで、過緊張の不安を少しでも解消しようとするアーティストが多いのだそうです。
但し、この薬を服用して演奏をすると、大変抑揚のないつまらないものになってしまうとの事で、やはり交感神経が極めて優位に立ち、アドレナリンが放出している状態でなければ、人を感動させられる芸術は生み出せないという事なのでしょうか。
天才的なアーティストは、往々にして、アグレッシヴでテンションの高い方が多い様です。
演奏家の体の問題は、個々により技術のレヴェルや、筋力、また指や腕の長さ太さ等、体格から生じる演奏時の障害も全く異なる為、最大公約数を見つけて治療に役立てる事は、仲々容易ではないのかも知れませんが、マニュアルがない以上、多くの悩みを個人が抱え、日々さらう折に対処してゆかなくてはならない現実がある中で、こうした研究がなされる事により、貴重なデータから、問題解決に向けて多くの光がもたらされるものと、今後も大いに期待をさせて頂いております。
2013.11.27 19:05
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