手は全てを語る?
職業柄でしょうか、初めて人にお会いした時に、しばらくお話をして、ふと目が行ってしまうのが、その方の「手」です。
「これはピアノに向いている手だなあ」、「この指の太さなら、美しく豊かな音が奏でられそう」、「これだけ指の長さがあれば、ラフマニノフの2番のコンチェルトの冒頭の左手の和音が一度に弾ける?」等々… ついつい想像してしまいます。
私の方も、演奏の舞台以外で手を見られていると感じる事はありますが、一般の方々からは、「コンサートの時にマニキュアをつけたら、お洒落で良いのではないですか?」、とよく提案を頂きます。
確かに、赤やピンク色のジェルネイルやマニキュアは、見た目が綺麗で華やかですし、フレンチネイル等は上品で美しいと思います。ただ、マニキュアを塗って演奏すると、私の場合は、鍵盤のタッチの感覚が変わってしまい、何となくしっくりせず、音楽に集中できなくなるという理由から、本番ではナチュラルな爪で演奏を行う事にしています。
ただ、グリッサンドの多い作品に取り組む際に、予めマニキュアを塗ってからさらうと、爪が割れて困る事が少なくなるという利点があるのは、よく知られていますよね。
しかし、マニキュアに関して言えば、塗っていると実際に困る様な場面に遭遇する事が、ピアノの演奏以外でも、コロナ禍ではあるかもしれません。
それは、新型コロナウイルス感染症の管理に必要となる、パルスオキシメーターという、皮膚を通して動脈血酸素飽和度(SpO₂)と脈拍数を測定する器械を使用する際です。
読者の方の中には、病院で測った経験がおありの方や、また既にマイ・パルスオキシメーターをお持ちの方もいらっしゃる事と思います。ご存じの様に、この器械は1本の指を挟んで測定しますが、とりわけ色の濃いマニキュアを塗っている場合には、誤差が出てしまう様です。マニキュアが(器械の)LEDの透過光を吸収するため、体を透過する光量の成分を減少させます。青・緑・茶色のマニキュアは光量を減少させる確率が高く、実際のSpO₂の数値よりも低く表示される可能性が高いのだそうです。
SpO₂が95%以上であれば、問題はなさそうですが、もしそれ以下の数値の場合には、僅かな誤差でも大きな問題となり得ます。
コロナであってもそうでなくとも、病院を訪れる際には、ジェルネイルもマニキュアも全て落としてから受診する様に心掛けたいですね。
さて、コラムの冒頭でも触れた初対面というシチュエーションでのお話に戻りますが、手で行うコミュニケーションの重要性は、手話以外にも握手というものがあります。
現在は、感染防止の観点から、極力控える様に言われますが、海外の方々とコミュニケーションにやはり握手は欠かせません。
武器を持っていませんよ、という友好の印を表すべく握手を行う訳ですが、欧米のマナーとしては、握力の弱い女性でもしっかりと強く握る事が求められ、それが相手への敬意や自身の誠実さを示す証しとなるそうです。
この「手」というのは、人の顔以上に心理状態を映しており、全く嘘がつけない様に、私はいつも感じています。
例えば、舞台に上がり、緊張でこわばる顔の表情を何とか笑顔にする事はできても、演奏中に震える手を自身の意思で止める事はできません。また、夏でも何故かコンサートの前には指が冷たくなったり、そして冬は舞台袖でどんなにカイロで温めても、かじかんだ様に指が冷えてしまう、というのは、まさに演奏者の心の状態を表しているという事が言えるでしょう。これらは、全て自律神経の交感神経が過剰に反応して起きている現象であり、自分の意志でどうにかしてコントロールしようとする事はできないのです。
ふと、幼い頃に周りの大人がよく言っていた言葉を思い起こしました。
「手が冷たい人は、心は温かいのよ」
はてさて… これは医学的に正しいのでしょうか、それとも単に自分をなぐさめるだけのための口実…?
どなたか読者の方で、もしご存じの方がいらっしゃいましたら、お教え頂けると幸いです。
【参考文献】
日本呼吸器学会 Q&A パルスオキシメータ ハンドブック
「これはピアノに向いている手だなあ」、「この指の太さなら、美しく豊かな音が奏でられそう」、「これだけ指の長さがあれば、ラフマニノフの2番のコンチェルトの冒頭の左手の和音が一度に弾ける?」等々… ついつい想像してしまいます。
私の方も、演奏の舞台以外で手を見られていると感じる事はありますが、一般の方々からは、「コンサートの時にマニキュアをつけたら、お洒落で良いのではないですか?」、とよく提案を頂きます。
確かに、赤やピンク色のジェルネイルやマニキュアは、見た目が綺麗で華やかですし、フレンチネイル等は上品で美しいと思います。ただ、マニキュアを塗って演奏すると、私の場合は、鍵盤のタッチの感覚が変わってしまい、何となくしっくりせず、音楽に集中できなくなるという理由から、本番ではナチュラルな爪で演奏を行う事にしています。
ただ、グリッサンドの多い作品に取り組む際に、予めマニキュアを塗ってからさらうと、爪が割れて困る事が少なくなるという利点があるのは、よく知られていますよね。
しかし、マニキュアに関して言えば、塗っていると実際に困る様な場面に遭遇する事が、ピアノの演奏以外でも、コロナ禍ではあるかもしれません。
それは、新型コロナウイルス感染症の管理に必要となる、パルスオキシメーターという、皮膚を通して動脈血酸素飽和度(SpO₂)と脈拍数を測定する器械を使用する際です。
読者の方の中には、病院で測った経験がおありの方や、また既にマイ・パルスオキシメーターをお持ちの方もいらっしゃる事と思います。ご存じの様に、この器械は1本の指を挟んで測定しますが、とりわけ色の濃いマニキュアを塗っている場合には、誤差が出てしまう様です。マニキュアが(器械の)LEDの透過光を吸収するため、体を透過する光量の成分を減少させます。青・緑・茶色のマニキュアは光量を減少させる確率が高く、実際のSpO₂の数値よりも低く表示される可能性が高いのだそうです。
SpO₂が95%以上であれば、問題はなさそうですが、もしそれ以下の数値の場合には、僅かな誤差でも大きな問題となり得ます。
コロナであってもそうでなくとも、病院を訪れる際には、ジェルネイルもマニキュアも全て落としてから受診する様に心掛けたいですね。
さて、コラムの冒頭でも触れた初対面というシチュエーションでのお話に戻りますが、手で行うコミュニケーションの重要性は、手話以外にも握手というものがあります。
現在は、感染防止の観点から、極力控える様に言われますが、海外の方々とコミュニケーションにやはり握手は欠かせません。
武器を持っていませんよ、という友好の印を表すべく握手を行う訳ですが、欧米のマナーとしては、握力の弱い女性でもしっかりと強く握る事が求められ、それが相手への敬意や自身の誠実さを示す証しとなるそうです。
この「手」というのは、人の顔以上に心理状態を映しており、全く嘘がつけない様に、私はいつも感じています。
例えば、舞台に上がり、緊張でこわばる顔の表情を何とか笑顔にする事はできても、演奏中に震える手を自身の意思で止める事はできません。また、夏でも何故かコンサートの前には指が冷たくなったり、そして冬は舞台袖でどんなにカイロで温めても、かじかんだ様に指が冷えてしまう、というのは、まさに演奏者の心の状態を表しているという事が言えるでしょう。これらは、全て自律神経の交感神経が過剰に反応して起きている現象であり、自分の意志でどうにかしてコントロールしようとする事はできないのです。
ふと、幼い頃に周りの大人がよく言っていた言葉を思い起こしました。
「手が冷たい人は、心は温かいのよ」
はてさて… これは医学的に正しいのでしょうか、それとも単に自分をなぐさめるだけのための口実…?
どなたか読者の方で、もしご存じの方がいらっしゃいましたら、お教え頂けると幸いです。
【参考文献】
日本呼吸器学会 Q&A パルスオキシメータ ハンドブック
2022.09.24 23:55
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