コラム

お気に召すままに…

フランスで生活をしていた頃の事ですが、学んだ大学の教授やクラスメートからよく言われた言葉のひとつに、「あなたの好きな様に!」というものがありました。 
これは、現地ではとても肯定的な表現として用いられ、発する側には「あなたを大切に思っている(からこそ言う)」というコンテクストがあり、多くの場合は笑顔で言われるのが常でした。

恐らくですが、自分とは違う他人の意思は尊重すべきだ、という事を重んじる文化から生じた重要な表現として存在するものと思われます。
大半の事は自らが決めたいと願うのは、人間のひとつの欲求の本質でもあると考えますが、当時この言葉が聞かれると、(もしかすると状況にも拠る所があったかもしれませんが)、全てにおいてしっくりとくる様な印象がしました。

最近とみに感じるのは、同じ表現でも使われる国によって、そのシチュエーションと解釈は異なるという事の妙です。
例えば、前述の「あなたの好きな様に」という言葉は、もし日本で用いられるならば、また少し印象が変わってくるのではないでしょうか。
何となく「どうぞ勝手にして下さい」という様な、発した側が受け手側に対して少し無関心であるとか、配慮をしないというニュアンスがある様に感じられます。
また、近しい人とけんかをした際、「もう、あなたの好きにしたら良い!」の様に、投げやりな態度で言う事もよくありますね。
或いは、相手から何かを相談されて、不幸にも知識が不足しており、必要な情報を提供できないとなれば、「あなたの好きな様にして良い」と言って、その場をやり過ごすという(?)、あまり勧められたものではない用い方もあります。

同じ言葉でも、フランスでは「あなたのためを思って」、ところが日本では「あなたの事はどうでもよい」というま反対の意味になるのですから(!)、日々人間が何気なく発する言葉には、様々な意味での力があり、また考えさせられ、関心が尽きないものです。

「あなたの好きな様に」は、端的に表せば「相手に物事を委ねる」となるのでしょうが、実際にはその“物事”の内容によって、肯定的にもまた否定的にも、受け手側が取れるとも言えます。
突き詰めてみると、なかなか奥が深い言葉である事が、改めてよくわかりました。

2017.07.19 23:55

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