風邪は病気と言えるのか
新型コロナウイルス感染症の流行が第7波を迎え、感染者も全国的に増加していますが、その一方で、2類相当から5類への位置づけの見直しについて、国では検討がなされている様です。
季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられた場合、外出自粛や就業制限等の要請はなくなりますが、検査や治療に係る費用は公費で負担されず、自己負担が生じると言った様なメリットやデメリットが生じます。しかしながら、まだ油断はできず、5類への格下げは現実的ではないとの見方が強い様です。
ただ、一般市民の間では、まだ大多数ではないものの、コロナはもう風邪と同等とみなして良いのではないかという認識に変わりつつあると考えられます。
例えば英国では、実際に風邪と同様に扱われる様になりましたが、自由に外出して活動する事ができ、マスクも外している人がほとんどである、とニュースで報道されています。フランスも同様で、既に大規模な野外コンサートが再開されている状況です。
これは新型コロナに限った話ではなく、同じコロナ属のウイルスのいわゆる風邪に対する考え方、対処法についても、ヨーロッパ諸国と日本では大分異なるのではないかと、彼らに接しながら思った経験があります。
日本人の国民性として、より慎重な行動を取ると言われていますが、例えば風邪を引いたら、高熱が出て、咳が続く様な場合、学校や仕事を休むのが一般的です。ウイルスに対する抵抗力が、欧米人と比較して劣るという理由もあるかもしれませんが、休むという行為には、周りに風邪を移さない様にするという配慮も含まれていると考えられます。
一方で、私自身が暮した英国やフランスでは、風邪は病気ではないとみなされているため、例え高熱があっても、休む様な人は見掛けた事がありません。風邪は時間と共に症状が治まるので、別に大した事はない、放っておけば治るという考えの元、ゴホンゴホンと咳をしながら、たいそう苦しそうに授業を受けていた同級生達を思い起こします。当時は、この二国に総合感冒薬なるものは存在せず、彼らはただアスピリンを服用し、自らの免疫力のみでウイルスを攻撃し、中には熱も下げる必要はない、と言ってひたすら時間薬でしのいでいる様な生徒もいました。(彼らの平熱は37度台ですから、免疫力は私達より若干高いと言えるでしょうか…。)
さて、パリ留学中の出来事ですが、フランス人のフルーティストと共演が決まり、コンサートに向けて、スタジオで合わせをしようと事になりました。
何フレーズか演奏する度に咳込んで、顔を赤くし、苦しそうにしているので、尋ねてみると、「実は、風邪を引いてしまって…」、と答えました。
ご存じの様に、フルートは息を吹いて音を奏でる楽器ですから、風邪というコンディションでは、ピアノの様な鍵盤楽器よりも、はるかに喉や肺に負担が掛かる事が想像できるかと思います。大分咳込みながら演奏していたので、私は、「もしつらかったら、また日を改めて合わせをやっても良いですよ」、と提案すると、「そんな、風邪ぐらいで、大丈夫。せっかくお互いのスケジュールを調整して今日にしたのだから、ちゃんとやるべきだよ。心配してくれて有難う」、と返されました。
しかし、フルートを吹く姿があまりに苦しそうなので、私はいつもバッグに風邪薬を入れて持ち歩いていた事を思い起こし、「もし良かったら、日本の薬を持っているのだけれど、これは熱も下がるし、咳も鼻水も一度に治まるので、試してみますか?」、と提案しました。すると、彼はこの「1粒で3度美味しい」日本の有名な総合感冒薬に興味を持ったらしく、「へえ、日本にはそんなのがあるの? じゃあ、飲んでみたい」、と言い、その場ですぐにミネラルウォーターと共に口に入れました。
それから10分ほど経ち、彼は「何か、咳が治まってきた、頭が痛いのが楽になったみたい」、と言いました。また効き目がやわらかくて良いね、と微笑んで、嬉しそうな顔で演奏してくれ、後半の合わせは前半よりも随分はかどった事は言うまでもありません。
別れ際に、「今日もらった薬は素晴らしかったよ! よく効いて、合わせも上手くいった」、と感謝されました。「僕もその薬が欲しいなあ。今度、日本に帰った時に買ってきてくれないかな?」、とまで言われたのです。
このフルーティスト以外にも、私の周りには日本の風邪薬のファン(!)が数名おりますが、副作用が無い(=つまり欧米人の体に合わせて作られた薬よりも効き目が穏やか)、と好評です。
例え対症療法であり、一時しのぎと言えども、総合感冒薬の有難さを、この様に海外で暮らしてみると、私の様な日本人は実感します。
とにかく、彼らには、風邪はれっきとした病気として認識すべきであると言っても差し支えなさそうですね。
季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられた場合、外出自粛や就業制限等の要請はなくなりますが、検査や治療に係る費用は公費で負担されず、自己負担が生じると言った様なメリットやデメリットが生じます。しかしながら、まだ油断はできず、5類への格下げは現実的ではないとの見方が強い様です。
ただ、一般市民の間では、まだ大多数ではないものの、コロナはもう風邪と同等とみなして良いのではないかという認識に変わりつつあると考えられます。
例えば英国では、実際に風邪と同様に扱われる様になりましたが、自由に外出して活動する事ができ、マスクも外している人がほとんどである、とニュースで報道されています。フランスも同様で、既に大規模な野外コンサートが再開されている状況です。
これは新型コロナに限った話ではなく、同じコロナ属のウイルスのいわゆる風邪に対する考え方、対処法についても、ヨーロッパ諸国と日本では大分異なるのではないかと、彼らに接しながら思った経験があります。
日本人の国民性として、より慎重な行動を取ると言われていますが、例えば風邪を引いたら、高熱が出て、咳が続く様な場合、学校や仕事を休むのが一般的です。ウイルスに対する抵抗力が、欧米人と比較して劣るという理由もあるかもしれませんが、休むという行為には、周りに風邪を移さない様にするという配慮も含まれていると考えられます。
一方で、私自身が暮した英国やフランスでは、風邪は病気ではないとみなされているため、例え高熱があっても、休む様な人は見掛けた事がありません。風邪は時間と共に症状が治まるので、別に大した事はない、放っておけば治るという考えの元、ゴホンゴホンと咳をしながら、たいそう苦しそうに授業を受けていた同級生達を思い起こします。当時は、この二国に総合感冒薬なるものは存在せず、彼らはただアスピリンを服用し、自らの免疫力のみでウイルスを攻撃し、中には熱も下げる必要はない、と言ってひたすら時間薬でしのいでいる様な生徒もいました。(彼らの平熱は37度台ですから、免疫力は私達より若干高いと言えるでしょうか…。)
さて、パリ留学中の出来事ですが、フランス人のフルーティストと共演が決まり、コンサートに向けて、スタジオで合わせをしようと事になりました。
何フレーズか演奏する度に咳込んで、顔を赤くし、苦しそうにしているので、尋ねてみると、「実は、風邪を引いてしまって…」、と答えました。
ご存じの様に、フルートは息を吹いて音を奏でる楽器ですから、風邪というコンディションでは、ピアノの様な鍵盤楽器よりも、はるかに喉や肺に負担が掛かる事が想像できるかと思います。大分咳込みながら演奏していたので、私は、「もしつらかったら、また日を改めて合わせをやっても良いですよ」、と提案すると、「そんな、風邪ぐらいで、大丈夫。せっかくお互いのスケジュールを調整して今日にしたのだから、ちゃんとやるべきだよ。心配してくれて有難う」、と返されました。
しかし、フルートを吹く姿があまりに苦しそうなので、私はいつもバッグに風邪薬を入れて持ち歩いていた事を思い起こし、「もし良かったら、日本の薬を持っているのだけれど、これは熱も下がるし、咳も鼻水も一度に治まるので、試してみますか?」、と提案しました。すると、彼はこの「1粒で3度美味しい」日本の有名な総合感冒薬に興味を持ったらしく、「へえ、日本にはそんなのがあるの? じゃあ、飲んでみたい」、と言い、その場ですぐにミネラルウォーターと共に口に入れました。
それから10分ほど経ち、彼は「何か、咳が治まってきた、頭が痛いのが楽になったみたい」、と言いました。また効き目がやわらかくて良いね、と微笑んで、嬉しそうな顔で演奏してくれ、後半の合わせは前半よりも随分はかどった事は言うまでもありません。
別れ際に、「今日もらった薬は素晴らしかったよ! よく効いて、合わせも上手くいった」、と感謝されました。「僕もその薬が欲しいなあ。今度、日本に帰った時に買ってきてくれないかな?」、とまで言われたのです。
このフルーティスト以外にも、私の周りには日本の風邪薬のファン(!)が数名おりますが、副作用が無い(=つまり欧米人の体に合わせて作られた薬よりも効き目が穏やか)、と好評です。
例え対症療法であり、一時しのぎと言えども、総合感冒薬の有難さを、この様に海外で暮らしてみると、私の様な日本人は実感します。
とにかく、彼らには、風邪はれっきとした病気として認識すべきであると言っても差し支えなさそうですね。
2022.07.25 23:15
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