コラム

2025年を振り返って考える事

さて、本年も残す所、僅かとなりました。
皆様は、この一年を振り返られて、どの様な年でしたでしょうか。
ご自身がなさられた事や、また世の中で起きた出来事が、鮮明に思い起こされると感じられたでしょうか。
めまぐるしく過ぎる時の中で、私には365日がこれほどにも早く感じられた事はない一年でした。
情報過多であるが故に、ほんの数ヶ月前に起きた事でさえ、既に遠い過去の出来事の様に扱われ、時には忘れられてしまう、その様な令和の時代の認識のあり方に違和感を覚えながらも、しかしそれを良いとも悪いともジャッジする事はできず、もどかしさを抱いていました。
早く浅く過ぎ去る日々、数世紀前のクラシック音楽を演奏する、古(いにしえ)の作曲家の作品を音に起こして人々に届けるという行為にはどの様な意味があるのか、改めて考えさせられる年となりました。

ファスト・フード、ファスト・ファッション、ファスト・ミュージックのメリットは、手軽にいつでも利用でき、即座に五感の欲求を満たせる事にありますが、クラシック音楽の様なスロー・ミュージックはその対極に位置すると考えています。
映画の大成功で話題となった、歌舞伎も然りです。
「何でも早く、そしてアップデート」の現代に、日本の伝統文化は、とりわけ若い人達にどれほどのインパクトを与えたか、想像を超えるものがあるのではないでしょうか。

諸々の事情により、こちらのウェブサイトに告知はできませんでしたが、本年もコンサートでお目に掛かった方々との一期一会のひとときは、忘れ難い貴重なものとなりました。
コロナ禍以前の様に、制限が課せられず、対面で演奏を行い、終演後には聴衆の方々と和やかにお話をさせて頂きながら、奏者としての喜びを再確認できた素晴らしい一年でした。
楽器の音や話す声が直接、振動として相手の耳に伝わり、それらが脳(心)に届いて、様々な感情を生み出す、それが可能である事が真の人々のふれあいの醍醐味というものであり、(有用性があるのは事実ですが)、コンサートの動画配信は、代替手段にはなり得ても、その動画には存在しない大きな価値を生演奏というものがもたらしていると確信を持って言えます。

本年もコンサートに足を運んで下さった多くの方々、また沢山の温かいメッセージを下さった読者の皆様に心より深謝申し上げます。
来る年が、穏やかで希望に満ちた新年となります様、祈念致します。

塩見 貴子

2025.12.31 23:35

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