楽譜を読む事はカンタンでしょうか…
「何でも楽譜を見てすぐ弾けるなんて、すごいですね!」と、周りの方が言って下さる事があります。
確かに、初見演奏(一度も読んだ経験がない楽譜を見て演奏する事)もそこそこできますし、少し難しい作品でも、数日間ほどさらえば、現代曲か超絶技巧の曲でもない限り、どの様な音楽でも一応は間違いなく弾く事が可能であるかとは思います。しかし、これは一定のトレーニングを受けた人であれば、(もちろん自身が習得した楽器に限りますが)誰でもができる様になる事ではないでしょうか。
わかりやすく例えて言うなら、単にミスなく弾けるというのは、美味しいカレーライスを作るために、じゃがいもや人参、玉ねぎやお肉を選んで、それをちょうど良い大きさにカットして、これで下準備が完了した、というだけの話なのです。ところが、カレーライスは、その後のカレールーの味付けの方法に全てがかかっているのではありませんか? 皆様も、経験からご存じの様に、育ててもらった方や、またご自身のパートナーが作るカレーの味は世界一でも、いざそれを再現しようとしてなかなかできないのは、そこにその人独自の味付けの技術や、味覚に関わる個性があるからなのですね。
ですから、楽器演奏の難しい所も、実は「その先」なのです。その先とは、一音の間違いもなく弾けたら、その後からがやっと音楽として、真の芸術としての追求が始まるという訳です。
死者は二度と語ってはくれませんから、まるで作曲家のお墓でも掘り起こす様に、譜読みの際には、自筆譜をリスペクトしている原典版というものをベースにして始めたり、また後世に残された数少ない貴重な自筆譜の中に隠された真実を探そうとします。そうして、演奏者に求められている、作曲家が欲していた音色、音の強弱、テンポ、そして曲想等を、限りなく“正しい”形で表現する事に、少しずつ近づいてゆくのです。
ヨーロッパの演奏スタイルでは、楽譜を深く読み込んで、実際にその読み取ったものを自らの音に表すという事を非常に重んじます。レッスンでは「楽譜に書かれていない事(=自分勝手に何かを表現しようとする事)を決してしない様に!」と言った注意がよく聞かれますが、その理由は楽譜に対して忠実である事が最も美しい演奏である、とあちらではみなされているからです。私も、パリ留学時代には、それを叩きこまれた様に記憶しております。
しかしながら、楽譜から何かを読み取るという事、そしてそれらを全て表現し得るためには、何年も、否、何十年もの時をかけて、ひとつの作品に向かい合う必要があります。また、演奏者も常に表現力においての技術を高めてゆかなければならず、絶えざるモチベーションが求められています。ですから、80歳を迎えて、ようやく少し納得のゆく演奏になるという事も、異論はない訳です。
楽譜を読むという作業は、なかなかに奥が深いものです。
「作曲家は何故そう書いたか、何を考えてそう書いたのか」を常に想像しながら、読譜を進めてゆくと、謎解きの様にも感じられて、興味が尽きる事はありません。
ヒポクラテスによる名言の「芸術は長く、一生は短し」は、元々はアート(芸術)=医術という意味で用いられていましたが、今では全ての職種のあらゆる人々に通ずる言葉としてあり、とりわけ音楽家には最もしっくりとくる様な気がしています。
確かに、初見演奏(一度も読んだ経験がない楽譜を見て演奏する事)もそこそこできますし、少し難しい作品でも、数日間ほどさらえば、現代曲か超絶技巧の曲でもない限り、どの様な音楽でも一応は間違いなく弾く事が可能であるかとは思います。しかし、これは一定のトレーニングを受けた人であれば、(もちろん自身が習得した楽器に限りますが)誰でもができる様になる事ではないでしょうか。
わかりやすく例えて言うなら、単にミスなく弾けるというのは、美味しいカレーライスを作るために、じゃがいもや人参、玉ねぎやお肉を選んで、それをちょうど良い大きさにカットして、これで下準備が完了した、というだけの話なのです。ところが、カレーライスは、その後のカレールーの味付けの方法に全てがかかっているのではありませんか? 皆様も、経験からご存じの様に、育ててもらった方や、またご自身のパートナーが作るカレーの味は世界一でも、いざそれを再現しようとしてなかなかできないのは、そこにその人独自の味付けの技術や、味覚に関わる個性があるからなのですね。
ですから、楽器演奏の難しい所も、実は「その先」なのです。その先とは、一音の間違いもなく弾けたら、その後からがやっと音楽として、真の芸術としての追求が始まるという訳です。
死者は二度と語ってはくれませんから、まるで作曲家のお墓でも掘り起こす様に、譜読みの際には、自筆譜をリスペクトしている原典版というものをベースにして始めたり、また後世に残された数少ない貴重な自筆譜の中に隠された真実を探そうとします。そうして、演奏者に求められている、作曲家が欲していた音色、音の強弱、テンポ、そして曲想等を、限りなく“正しい”形で表現する事に、少しずつ近づいてゆくのです。
ヨーロッパの演奏スタイルでは、楽譜を深く読み込んで、実際にその読み取ったものを自らの音に表すという事を非常に重んじます。レッスンでは「楽譜に書かれていない事(=自分勝手に何かを表現しようとする事)を決してしない様に!」と言った注意がよく聞かれますが、その理由は楽譜に対して忠実である事が最も美しい演奏である、とあちらではみなされているからです。私も、パリ留学時代には、それを叩きこまれた様に記憶しております。
しかしながら、楽譜から何かを読み取るという事、そしてそれらを全て表現し得るためには、何年も、否、何十年もの時をかけて、ひとつの作品に向かい合う必要があります。また、演奏者も常に表現力においての技術を高めてゆかなければならず、絶えざるモチベーションが求められています。ですから、80歳を迎えて、ようやく少し納得のゆく演奏になるという事も、異論はない訳です。
楽譜を読むという作業は、なかなかに奥が深いものです。
「作曲家は何故そう書いたか、何を考えてそう書いたのか」を常に想像しながら、読譜を進めてゆくと、謎解きの様にも感じられて、興味が尽きる事はありません。
ヒポクラテスによる名言の「芸術は長く、一生は短し」は、元々はアート(芸術)=医術という意味で用いられていましたが、今では全ての職種のあらゆる人々に通ずる言葉としてあり、とりわけ音楽家には最もしっくりとくる様な気がしています。
2019.09.29 23:50
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