コラム

たかが水、されど水

人が生命を維持するために、水を必要不可欠とする事は言うまでもありません。
水分の補給の目的の他にも、コロナがパンデミックとなってからは、毎日この水で手を洗ったりうがいしたり、頻回に洗浄を行う事で、ウイルス除去を助ける重要な役割も果たしています。

さて、ヨーロッパでは、紅茶やハーブティー以外の、緑茶や麦茶、ウーロン茶等のお茶を、日常的に飲む習慣がないですから、喉が渇けばいつでもミネラルウォーターを飲むという事になります。(水道水は石灰を多く含む事から、飲料水には適していないとされています。)また、食事の際にも大活躍するのですが、ミネラルウォーターでもペリエ等のいわゆる炭酸水は、喉の渇きを満たす目的の他に、美味しく食事を取るための食欲増進剤としても大変ポピュラーです。

フランスでは、炭酸水は胃もたれを起こしている等の、胃腸の調子がすぐれない時に、医師の先生から勧められる飲み物でもありますので、人々の健康維持に一役買っています。
炭酸がかえって胃腸を刺激して、悪影響を及ぼすのではないか? と想像される方もいらっしゃるかと思いますが、医学的にも胃腸の動きを活発にさせる事が証明されているそうです。
(但し、腸の中でガスが生じている方には向きませんので、どうぞご注意下さい。)

以前、パリから日本に帰る際に、ひどい寝不足だったためか、飛行機の中で乗り物酔いの様に、ずっと胃がむかむかして、機内食が食べられない事がありました。
フランスでは、レストランでもカフェでも、提供された料理を完食できずに残すと、「お口に合いませんでしたか?」、と必ずその理由を尋ねられます。胃が悪く食べる事ができない旨を伝えると、フランス人のキャビンアテンダントの女性が、親切心から、炭酸水とコカ・コーラを度々サービスして下さいました。

コカ・コーラも、また胃腸の働きを助ける物として、フランスでは大変重宝されており、体に良いとはさすがに言い難いでしょうが、とりわけ乗り物酔いの防止等、吐き気を抑えるためにはよく用いられています。
同様に炭酸水では、ファンタ・ジュースも医学的(!)な役目を果たしており、フランスでは、小さな子供が高熱を出して、食事が全く取れない時には、ファンタをたくさん飲ませなさい、とよく言われますし、またアフリカでは、過去にフランス領であった地で、先進国の様な高度な治療が行えずとも、マラリアに罹った場合には、脱水を防ぐべく、患者はファンタを飲む事が推奨されています。

さて、水や炭酸水には、数えきれないほど多くの銘柄がありますが、皆様も幾つかお気に入りがおありではないでしょうか。
これまでに、様々な国の水を試してみましたが、私はなめらかで美味しい軟水よりも、ヴィッテルやエビアン等、独特のテイストを持つ硬水が好みであるという事がわかり、以来、ミネラルウォーターでは、それらばかりを選んで購入しています。また、炭酸水ではサンペレグリノやペリエ、バドワを好んで飲む事が多いですね。
たかが水、されど水でして、それぞれに味や舌ざわりも異なり、光る個性を持っています。また、硬水にはマグネシウムや塩分が含まれているせいか、水以外の味もするため、その様な理由で、私には軟水よりも美味しいと感じられるのかもしれません。

このコラムをしたためながら、水は大変奥が深い物であるという事が再認識できましので、更に突き詰めてみたくなってきました…。

2021.11.29 23:05

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