コラム

日々の暮らしに“心のスペース”はあるべきか

​他国では、しばしば日本人は生活を送る上で慌ただしく、総じて心にゆとりのない民族であるとみなされている様です。

ラテン気質のフランス人は、四六時中ジョークを言い合って笑う事が大好きですが、笑いのエスプリも極上である彼らを、いざ笑わせてみようと試みるならば・・・ 我々日本人にとって全く容易な事ではありません!


しかしながら、およそ自慢にもなりませんが、唯一受けの良い私自身のジョークの十八番(おはこ)ー 決して失敗する事なく、100%の笑いが起こります!- が実はあるのです。 

皆様も、もしフランスへ行かれる事がありましたら、ぜひトライして仰ってみて下さいね!


パリの友人:「ああ、昨日も今日も・・・ また夜遅くまで仕事で大変だったよ。本当に疲れた!」

私:「あら、そんなに働き過ぎたら、あなたも日本人になっちゃうわよ!」

これで、へとへとに疲れた友人も大笑いして、ほっこりした笑顔を見せてくれるでしょう。


改めて考えてみますと、先進国で昼夜働く人、小さな子供の育児に追われる人、また受験を控えた十代の若い学生等、いずれの状況に置かれていても、暇を持て余している人の方がやはり少ないであろうというのが事実です。


ただ、欧米の人々には、例え目が回る程忙しくとも、自分自身の時間の使い方や心のゆとりを忘れる事がありません。

共に暮らしていた時に感じた事ですが、物理的に余裕がなく、何かの〆切に間に合う事が出来ないとしても、それで追い詰められるという感情を抱く事がなく、彼らは平然とマイペースで淡々と作業を続けています。

これが、日本人は真面目過ぎると言われる所以でしょうか。

しっかりと期日までに課題をやり遂げないと、何か他人に迷惑を掛けて、自分が少し悪者になった様な罪の意識が生まれるのです。


音楽での話ですが、例えば室内楽で合わせを行い、全く同じ楽器の同じ作品を弾いて、勿論演奏者ひとりひとりが異なると感じるのは必然です。

しかしながら、お国の違いでこれ程まで設定するテンポや呼吸の仕方が異なるものか、という事に驚き気付かされる場合があります。

日本人のソリストは、それだけの技術を持っているから出来る事ですが、総じてテンポが速く、とにかく先へ先へ急ごうとしてしまいがちです。

まるで、人生を生き急ぐかの如く「弾き急ぎ」の典型であり、音を楽しむ、また慈しむ余裕の全くない音楽が多い様に感じられます。


とりわけ、ラテンの人々の奏でる演奏の素晴らしさのひとつに、全体的には緊張感を保ちながらも、一貫してスタイルは優雅であり、また極めて大きな時の流れを想像させるテンポを持って、音楽を創り上げる才能が幼い頃から自然に身に付いているという事です。

それは紛れもなく、悠久の時の流れの中で、ヨーロッパの歴史に今も続く人々の暮らしから生まれた、いわば“芸術”のある日常から導かれているものである、という事を確信出来ます。

芸術は心の空間やゆとりを最も必要としますし、せかせかと急ぐ様では何も表現出来ないのは当然の事です。

世界に出れば「日本人の音楽には何か訴えるものがない」と厳しく批評されますが、表現したいものがない訳ではなく、その理由はミスをしないで演奏出来るという能力を超えて、私はこれを表現したいという欲求を抱く心の余裕や、故武満徹氏の言われた「奏でた音の行く先に何が在るのか」について、恐らく思考を巡らせるゆとりがないのからかもしれません。


そう言った貴重な事実を肌で知り、体感出来た十代、また二十代をヨーロッパで過ごさせて頂き、それが音楽を創り上げる上で私自身の糧となる様願って、今後も更なる研鑽を積んでまいります。








2015.10.31 23:45

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