コラム

多様性の時代に相応しい日本食

パリに住む友人が教えてくれたのですが、あちらでは最近、日本のおにぎりが流行っているのだそうです。私はそれを聞き、日本人がジャンボン・フロマージュという、バゲットのサンドイッチ(=フランスパンにハムとチーズをはさんだ、フランスでは定番のシンプルなサンドイッチ)を見てお洒落だなあと感じる様に、フランスの人々は、おそらくおにぎりというものが、非日常的ではあるけれども、彼らにとって何かしっくりとくる、センスのある食べ物であるという認識を持ったのではないかと考えました。
ヨーロッパでは、お米を主食ではなく野菜のひとつとして捉えるため、彼らにとりおにぎりはヘルシーで体に良いというイメージが作られている様に思います。ご飯の中の具材を梅干しやこんぶ等にすれば、ベジタリアンやヴィーガンの人々にも対応でき、もちろん小麦アレルギーの人も安心して食べられますので、まさに多様性の求められる時代にうってつけのフードと言えるのではないでしょうか。

お米を使ったお料理と言えば、フランスではお寿司の人気ももちろん高いですが、やや高級なイメージがあり、いつも食べられるという訳ではなく、何か特別なイベント(ビジネスでの接待や、誰かのお祝いをする時、或いは大切な人との特別なデート等)で食べるという印象です。
対するおにぎりは、価格もお寿司に比べて、遥かにリーズナブルで、感覚としてはそれこそバゲットにハムやチーズをはさんで食べる様な、気軽さがあります。しかも、昼食時にパリで見掛ける、道を歩きながらサンドイッチやエクレアをほおばると言った彼らの習慣にも、おにぎりは非常によくマッチしそうです。

その友人が、自分でも作ってみたいと言うので、「ご飯は素手で握ると美味しさが増すから、なるべくそうしてみて」、とアドバイスしました。その理由を説明すると、納得しながら笑っていましたが、「でも、今はコロナの事があるから、神経質な人に素手はちょっと難しいわね…」、と言うので、「ならば  “おにぎらず” という作り方もあるわよ」、と返すと、「まあ、おにぎりもそうやって時代と共に進化しているのね…!」、と驚いていました。
たかがおにぎり、されどおにぎりです。

私は、彼女を少しだけ喜ばせようと考え、手でご飯に触れずに三角おにぎりが上手に作れる型とコシヒカリのお米、そして海苔としそわかめと美味しいお塩をセットにして、お鍋でのご飯の炊き方の説明書きも添え、航空便で彼女の家に送りました。
あちらでは、サーモンやアボカドを入れたおにぎりが人気だそうですが、やはり友人には、王道である、お米の味を楽しめる様なおにぎりを、まずは彼女自身で作ってもらえたらと期待しています。

2024.04.28 23:15

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